【ワダサカ論】vol.9

Vol.9 様々な指導者

 

このコラムを読んでいる皆さんの中には、指導者を目指す方も多いと思います。そこで今回は指導者に焦点を当てて書いていきたいと思います。

いろいろなタイプの指導者がいますが、旧ユーゴスラビアには個性的な指導者が多く、数々のエピソードを聞きました。高校生の皆さんは世代が違うため知らないと思いますが、旧ユーゴスラビアは選手同様に、多くの指導者を輩出してきました。アジアやアフリカの国々に指導者、または指導者の指導者を送りだし、ヨーロッパでも旧ユーゴスラビアの指導者は活躍しました。レアル・マドリード、FCバルセロナ、アトレティコ・マドリードというスペイン3大クラブ全てで指揮した唯一の監督であるアンティッチ監督(アトレティコ・マドリードでリーガ・エスパニョーラとスペイン国王杯優勝の二冠を達成。セルビア代表監督も務め、2010年南アフリカW杯出場へ導いた)も旧ユーゴスラビア出身です。

元々個性的な方が多い旧ユーゴスラビアですが、サッカークラブの監督ともなると信じられないような話が出てきます。

1970年代の話になりますが、クロアチア出身のブランコ・ゼベッツ(ハンブルガーSV、ドルトムントなどで監督を務め、5つのタイトルを獲得した。)監督は、ドイツやユーゴスラビアのクラブで長年指揮をした方で、お酒が大好きだったそうです。彼がFCバイエルン・ミュンヘンで指揮をしていた時のことです。連日お酒を飲み続け、なんと試合中にもかかわらずベンチで寝てしまいました。しかもテレビカメラにその姿を捉えられてしまったのです。当然のように大変な批判を受けたのですが、所属していたフランツ・ベッケンバウアー(旧西ドイツ代表。バロンドール2回受賞したドイツが誇る世界的な名プレーヤー)が「何をごちゃごちゃ言っているんだ。彼はベンチで寝ていたが、それでも西ドイツ中のどの監督よりも優秀だ」と言ったそうです。今では考えられない話です。

日本でもおなじみのオシム監督もまたボスニアヘルツェゴビナ出身で、面白い話があります。ある試合でサポーターから物凄く人気のあるスター選手をスタメンで起用せず、ベンチに座らせました。するとサポーターはそれを不満に思い、その選手の名前を試合中ずっと叫んでいました。オシム監督はその選手にウォーミングアップを命じます。ベンチに呼び、さあ、いよいよスター選手の出場だとサポーターが盛り上がった時に、サポーター席の方を指さし、「スタンドでお前を呼んでいるから行ってこい」と試合に出すのではなく、サポーター席へ行くように指示したそうです。

どちらも真相は定かではありませんが、普通の監督であれば間違いなくクラブ、選手、サポーターから総スカンですよね。これが許されるのは結果を出し、カリスマ性のある優秀な監督だけです。

この話を聞いたときは笑いましたが、同時に私もそんなレベルの指導者になりたいと思ったものです。

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このような例は極端なものだとしても、どの指導者も強いパーソナリティを持ち、プライドの高いプロ選手たちを一つにまとめる手腕を持っています。私の師であるベルデニック監督は常々「指導者にとってトレーニングは大切だが、これは何とかなる。一番難しいのは、選手を一つにまとめることだ」と言っていました。

私がこれまでJリーグで一緒に仕事をさせてもらった監督のみなさんもそれぞれ自分のスタイルを持っていました。次回はその話を書きたいと思います。

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