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【ワダサカ論】vol.7
vol.7 ガンバ大阪
Jリーグのいくつかのチームでコーチや通訳を経験してきましたが、今回はリーグ優勝・ACL優勝など代えがたい体験をさせてもらったガンバ大阪時代の話を書こうと思います。
私は2005年から2008年までトップチームコーチとして在籍しました。当時はチームの半数が代表クラスの選手で、監督が西野朗さん(ガンバ大阪で7つのタイトルを獲得。2018年のロシアW杯では日本代表監督を務め、ベスト16へ導いた。現タイ代表監督)という日本トップと言えるチーム環境でした。
当時のガンバ大阪には、代表選手や世代別代表経験者も非常に多く、加えて質の高い外国籍選手もいました。ガンバ大阪に来る前にも他のJリーグクラブで仕事をしていましたが、開幕前のグアムキャンプでの初練習時の緊張感、集中力の高さは際立っていたことを今でもよく覚えています。
指導する立場である私から見て、タイトル争いをしていたチームでレギュラーに選ばれる選手、日本代表に選ばれる選手に共通した特徴は、「地道な作業を長期間休むことなく行うことができる」、「自分を客観的に分析し改善点を自分で見つけることができる」、「絶対的な武器を持っている」ということがあげられます。
例えば加地亮さん(2006~2014ガンバ大阪に所属。元日本代表)は練習開始2時間前にはクラブハウスに来て、トレーニングに向けてしっかり準備をしてから練習に臨んでいました。現在ガンバ大阪トップチームコーチの山口智さん(2001~2011ガンバ大阪に所属。元日本代表)も毎日早くから練習場に来ては入念に準備をしていました。
自分の能力を伸ばす作業を長期間続けるという点で、特に印象深い選手は丹羽 大輝選手です。私がガンバ大阪に入団した時、丹羽選手は2年目の若手選手でした。彼より優れた選手はたくさんいましたが、「持っている能力を最大限生かした選手」という観点では、一緒に仕事をした数々の選手の中で、彼以上の選手はいないです。スピードが特に速い、テクニックが物凄くあるという選手ではありませんでしたが、練習に取り組む姿勢や成長するために必要なことを考えて実行する能力は抜群でした。
丹羽選手は、日ごろの練習から集中力は非常に高く、レギュラークラスの選手に対しても遠慮せずに自分からアドバイスをもらいに行き、全体練習が終わっても必ず個人練習をしていました。彼とは色々な話をし、キック練習や1対1を毎日のようにしました。当時は選手層が厚かったこともあり、試合にほとんど絡めずレンタル移籍をしましたが、2012年にガンバ大阪へ復帰すると2014年の国内三冠を達成したチームの中心選手として貢献しました。日本代表にも召集され、34歳になっても未だに現役でプレーしています(現FC東京)。
サッカー選手を目指す皆さんも自身を見つめる時間が多い今の機会に、選手としての武器・能力・足りない部分などじっくりと考えてみてください。
日本ではボール扱いが上手な選手を凄く評価しますが、それだけでは十分ではありません。もちろんボール扱いの上手さは必要ですが、それだけではサッカーになりません。また「ボールの扱いが苦手でもヘディングに強くて空中戦はほとんど勝つ」や「1対1の守備で必ず止めてくれる」という丹羽選手のような選手は必要ですよね? 丹羽選手は自身の『武器』を突き詰めたことで日本代表に選出されるまでに至った訳です。
カテゴリー、レベルが上がれば上がるほど『武器』が必要になります。
まだまだ以前と同じようにサッカーに取り組めるまでには至っていませんが、このまま少しずつ社会情勢が落ち着いていけば、またサッカーができる日が来ます。
その日に向けてもう一度、自分のプレーについて考えてみることをお勧めします。選手としてもう一歩伸びるきっかけになるかもしれません。