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【ワダサカ論】vol.16

Vol.16 海外挑戦

 

コロナ禍によるリーグ戦の中断、再開、各種大会の中止などこれまでに経験したことがない大変な年になっていますが、その中で少しずつですが我々の学校でも進路の話が出てくるようになりました。

 

Jリーグクラブへの就職、選手をこれからも続けたいなど色々な希望がありますが、その中に『ヨーロッパでサッカーをする』という選択肢も存在しています。

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ヨーロッパは世界中の優れた選手が集り、日本でもネットを通じて、多くの試合を観戦できます。メディアの露出量が圧倒的に多いヨーロッパでプレーしたいと思う選手が多いのは自然なことです。一人でも多くの選手に『ヨーロッパでプレーする』という目標を達成してほしいと指導者としても強く思います。

 

その一方で、日本とは全く違う文化、言語に触れて、全く新しい世界でサッカーをするという事は素晴らしい経験になると思いますが、選手としてのステップアップという点から見た場合、必ずしもプラスになることばかりでないことも理解しておかなければなりません。

はっきり言って、『ヨーロッパ(海外)に行けば上手くなる』というのは錯覚です。もちろん成長はしますが、それは日本でもできます。クラブ側からオファーが来るような選手(すなわち代表クラスの選手です)でなければ、自分が希望するレベル、少なくとも日本でプレーしていた時と同等のクラブでプレーすることはかなり難しいでしょう。

これは考えにくいことでも新しい発見でもなく、当たり前のことです。あなたがクラブの強化部やオーナーの立場になって考えてみてください。言葉が通じない選手と通じる選手、同程度の力だとしたらどちらの選手を獲得しますか?海外移籍にはビザも取得しなければならないし、そもそも国際移籍は手続きも煩雑です。どうでしょう?同じくらいの能力であれば、おそらくほとんどの強化部やオーナーは、煩雑な手続きもなく言葉が通じる選手を獲得するはずです。

つまり、既存の選手よりもかなり優れていなければ簡単には契約してくれないということです。その上、言葉が通じない中で実力を発揮することは想像以上に難しいことです。そう考えると自身が考えるレベルに見合ったチームにすら入れない可能性はますます高くなり、プレーするチームのレベルを下げるしかなくなります。

この場合、プレーする場は確保できる訳ですから、良いプレーができれば、ヨーロッパは移籍自体が非常に盛んなのでステップアップするチャンスはあります。

 

もしかしたら、今のチームでは自分の良さを理解されていない、海外に行きさえすれば自分はきっと認められ、すべてが好転すると思っている人もいるでしょうが、残念ながら現実は日本も海外もそれほど変わりません。むしろ先に述べた理由でより厳しいものだと認識することが必要です。バラ色の未来だけを期待して海外に行くのは非常にリスクが高いです。

 

次回は『海外挑戦の現状』についてお話したいと思います。

(続)