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【ワダサカ論】vol.24

Vol.24『通訳』に必要な能力とは

 

 

今回は通訳シリーズ最終回。クラブで通訳の仕事をする上で求められる能力について書こうと思います。

 

 

サッカー界での通訳には語学力はもちろん、サッカーの知識もある方が良いですが、一番は「想像力」だと思います。外国で生活する時にどんな問題が起きるか想像できない人には難しいと思います。

そして「プライベートでもちゃんと会話が出来る」こと。私はスロベニアに滞在していた時に日本食レストランでアルバイトをしていました。現地の食材や調理法、調理器具名を知っていたことで、後に日本で通訳をすることになった時、監督の奥さんからのリクエストにもしっかりと対応できました。

他にも監督、選手の友人が日本に遊びに来るという事もあります。日本の観光地もある程度把握しておかなければなりません。お土産、免税品などのリクエストは当然あるので、いろんな情報を事前にチェックしておくことも必要です。

観光ひとつをとっても「想像力」が大切になります。

 

観光と言えば思い出すことがあります。単身で日本に来ていた監督の家族が日本へ遊びに来たので、近くの有名な温泉街へみんなで出かけました。旅行ガイドを購入し、事前に調べておいた旅館へ行って、日帰り入浴を利用しました。ところが入ってみると旅行ガイドの写真にある豪華な温泉とは全く異なる銭湯のような狭い浴槽しかありません。気まずい雰囲気のまま浴槽を出ると女性陣はニコニコして「最高だった!」と大喜びしていました。

その時に分かったのですが、日替わりで男女の浴場を入れ替えていて、旅行ガイドには豪華な方しか載っていなかったのです。旅館側としたら当然豪華な方しか載せないでしょうが、こちらとしては冷や汗ものだったという経験をしたことがあります。

 

 

想像力や知識も大切ですが、やはり最後は人間関係ですから、監督や選手達とどれだけ関係が作れるかどうかでしょう。

ただ、いくつか挙げた要素が無いから通訳としてダメという事ではありません。実際、私が通訳をしていた時を振り返ると自分の想像力は欠けていたと思います。私の場合、幸いだったのはスロベニアで学んでいた時の先生に当たる方々の通訳をすることになったので、すでに人間関係がある程度できていたという事です。

 

 

これから通訳を目指す方は、広い視野を持って、様々なことを勉強してください。知識が多ければ多いほど役に立ちます。

あとは他人への関心を持ってほしいと思います。言葉の通じない、習慣も違う、友人もいない国で暮らし、仕事をすることがどれだけ大変なことでしょうか。結果が伴わなくても隣で支えてくれる通訳がいたら心強いと思いませんか?

私が名古屋グランパスの通訳時代にヴァスティッチ(2002~2003在籍)、パナディッチ(2002~2004在籍)というクロアチア人選手がいました。スロベニア語とクロアチア語は似ているので彼らとピッチ外でも一緒によく行動しました。二人とも活躍していましたが、残念ながらヴァスティッチが退団となり帰国することになりました。

帰国前に彼の自宅へ行った時、感謝の言葉と共にユニフォームを一式渡されました。

これは嬉しかったですね。十分な通訳ではありませんでしたが、選手の役に立っていたことを実感できた瞬間でした。

 

 

「通訳」という仕事は、想像以上に地味な仕事や苦労することも多いですが、その分、とてつもない達成感と数々の出会いを味わえる素晴らしい仕事です。

これまでの4回に渡ったコラムを読んで、少しでも「通訳」という仕事に興味、関心を持ってくれたら嬉しいです。