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【ワダサカ論】vol.33

Vol.33 【上手くいくクラブ】に必要なものとは

 

 

前回は、私がガンバ大阪に在籍していた時、数々のタイトルを獲得できた頃のことについて書きました。今回は、当時のガンバ大阪のようにクラブ全体が円滑に機能することが、どのようにチームに好影響を与えるか書いていきます。

 

まずクラブが円滑に機能するためには、役割分担と責任の所在が明確でなければならないと思います。決定権と責任を持つ人、その人と連携してより具体的な方向性を示す人、それを各部署で実行する人、という組織体制があること、そして明確な評価基準があることで、フロントスタッフは集中して業務にあたることができます。

この環境が整うことで、クラブ内の雰囲気が良くなると思います。雰囲気の良いグループと悪いグループがあれば、誰しも雰囲気が良いグループで働きたいでしょう。雰囲気が良い状態というのは、スタッフ達もそのグループ・環境に居続けたいという気持ちが強くなります。そのため、仕事でより成果を出そうと努力します。話がしやすい環境なのでお互いにアドバイスをしてより良いものが生まれます。

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そのようなグループが身近にあれば、選手にも良い影響を及ぼします。選手に伝わるのはクラブに対するポジティブな発言、姿勢です。逆に役割分担、評価基準があいまいで誰が何をしているのか分かりにくいグループだとしたらどうでしょう?選手に伝わるのは愚痴、噂話、悪口などネガティブなものになるでしょう。

選手にとって理想的なのは、雑音が少なくプレーに集中できる環境です。

 

繰り返しになりますが、少なくとも私が在籍した当時のガンバ大阪は、ポジティブなクラブに見えました。もちろん問題が無かった訳ではないですし、私も納得いかないこともありましたが、全体としては非常にポジティブな雰囲気に覆われたクラブだったと思います。それに加えて選手のポテンシャル、優れた監督といった要素が上手くかみ合って、素晴らしい結果を生み出せたと思います。

 

3回にわたってクラブの在り方を考えてきましたが、『クラブ内の風通しの良さ』、『優れたリーダーの存在』という点が【上手くいくクラブ】になるかどうかのポイントだと思います。

風通しの良さは、クラブとしての一体感を生む雰囲気をつくりだしますし、新しい試みも生まれやすくなります。その前提として、役割、責任の所在は明確にしておかなければなりません。そしてなるべく各部署が、近くでお互いの仕事を感じ取れる環境であること。これも重要な要素だと思います。自分が所属している部署以外の視点があるかどうかは、視野が狭くならないようにするためにも必要です。

そしてなんといっても決断力と責任感を持つリーダーの存在。これは社長だけでなく、各部署のリーダーもそうですし、現場では監督という事になります。良いリーダーがたくさんいることでクラブが一つにまとまり、スタッフが落ち着いて集中して働けるのです。

リーダーというと先頭に立って全員を引っ張っていくというイメージかもしれませんが、様々な形のリーダーシップが存在するので、必ずしも引っ張る必要はないと思います。しかし、自分の保身しか考えない、明確な基準が無くその場しのぎの対応を繰り返す、決断を部下に任せ、結果が悪いと部下のせいにして責任逃れをする。このようなリーダーでは上手くいくはずがありません。

 

サッカー界に限らず、どの組織にも問題は存在しますし、ある条件を満たせば必ずうまく行くということでもありません。組織内は問題だらけでも上手くいくときもあります(その逆も)。

ただ、安定した組織、結果を求めるのなら、決断力と責任感を持つリーダーの存在は重要な要素であるといえるでしょう。今年亡くなった元プロ野球選手・監督の野村克也さんが「組織はリーダーの器以上に大きくはならない」と仰っていました。いくら立派な組織図を作ったとしてもそれを運営するのは人間です。

 

いかにリーダーが重要か、我々はよく考える必要があるのではないでしょうか?