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【ワダサカ論】vol.19

Vol.19 コンディショントレーニング

 

9月に入りましたが相変わらず暑い日が続いています。この暑さの中、日本ではリーグ戦が行われていますが、ヨーロッパでは新シーズンに向けての準備が始まっています。

19/20シーズン終盤はコロナ禍の影響で変則的になったため、来シーズンに向けての準備にも影響が出るでしょう。様々な外的要因の影響を受けながらのトレーニングという事で、これまでとは違ったやり方も必要となるかもしれません。今回は「コンディショントレーニング」について書いていきます。

 

通常、開幕までの準備期間は6~8週間程度です。その間に戦術、コンディションを中心にトレーニングをして開幕に備えます。20年くらい前は、まずはボールを使わずにランニングを中心としたフィジカルトレーニングを行い、それから戦術トレーニングに移っていくのが一般的な流れでした。

現在では『プレーモデル』があり、それをピッチで表現するためにトレーニングを行うというやり方が一般的になっています。『プレーモデル』とは、「攻守両面での問題を解決するためにどのように選手同士が関わるか」を示したものです。近年は、この『プレーモデル』浸透のために全てのトレーニングが組み立てられています。

20年前とは異なり近年は、チームが始動してからすぐにボールを使ったトレーニングをするチームが増えています。この方法のメリットは技術、戦術、コンディションの全てを同時に向上させられることです。20年前のトレーニング方法では、走っている時はコンディションのみが向上し、戦術トレーニングに入るとコンディション面のケアが不十分になる可能性がありました。また、戦術は戦術、コンディションはコンディションと別々にトレーニングをするので、チームを作る上で余計に時間が掛かるという問題もありました。

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もちろん現在でも開幕準備期間の前半と後半では、フィジカル・戦術トレーニングの比重は異なりますが、以前のようにボールはしばらく使わずに走り込みばかりという方法はあまり用いられません。モウリーニョ(現トッテナム監督。チャンピオンズリーグ優勝を2回達成するなど数々のタイトルを獲得した名将)は「演奏するには体力が必要だからといって、ピアニストがピアノの周りを走ったりはしない」と言っています。これが現代のトレーニングに対する基本的な考え方です。サッカーをすることでサッカーの技能と同時に体力面も向上させるのです。以前は倒れるほど走ったとか、吐くまで追い込んだ、というトレーニングが好ましい現象のように語られていましたが、今は技術、戦術面を高めながらコンディション面を効率的に向上させることに重点が置かれています。

 

近年主流となった、ボールトレーニングの中でコンディションを上げていく場合、サッカーをよく理解したフィジカルコーチが必要です。監督がやりたいトレーニング、プレー要素を正しく理解した上で、トレーニングにコンディションの要素を組み込み、監督に対して負荷の面で適切な助言ができなければなりません。経験だけではなく、理論的、科学的な裏付けが必要です。

 

戦術同様、トレーニング方法も常に変化していきます。特に指導者を目指す皆さんは、常に勉強する姿勢を忘れないで欲しいと思います。