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【ワダサカ論】vol.46
Vol.46 正しい努力
先週のコラムで丹羽 大輝選手(現セスタオ・リベル・クラブ=スペイン)の話をしました。何度か彼のことを書いているので覚えている方もいるかもしれませんが、彼は先天的才能(例えばゲーム感覚、コーディネーションやスピードなどの運動能力)よりも勤勉さ、考える力、努力によってプロサッカーの世界で(競技的)成功を収めた選手です。
“良い選手“になるために必要な要素は沢山あります。私が留学していたスロベニアでは成功に至るための計算式が存在しています。
まず、成功へつながる多くの要素を3つのグループに分類します。
1.外的要因
2.内的要因
3.トレーニングプロセス
例えば「1.外的要因」には社会におけるサッカーの価値、自然にサッカーへ親しむ可能性、専門知識、専門家などが含まれます。
「2.内的要因」ではインテリジェンス、性格、身体的特徴、対人関係、健康状態などです。
そして「3.トレーニングプロセス」はセレクション、練習メニュー、トレーニング環境、試合のレベルなどが数えられます。そしてどの要因にも計算ミスが加えられます。
この計算式は旧ユーゴスラビア時代から用いられてきたものです。旧共産圏諸国では国の政策としてスポーツ強化が図られてきた歴史があり、精神論に頼らず数学的観点や科学的に捉えていました。それが現代のスポーツ科学に繋がっています。
この計算式で考えると丹羽選手の場合、特に「2.内的要因」に選手としての成功の理由を見出すことができます。彼はガンバ大阪ユース出身ですから、当然トレーニングプロセスの質が高いものだったことは疑いようがありません。ただ、彼の成功は「内的要因」の充実、言い換えれば自分を客観視できて、精神的に安定した人間性がもたらしたと言えるでしょう。
丹羽選手は考えるだけでなく、「正しい努力」のできる選手です。私も多くの選手を見てきましたが、何も考えずにただ練習する選手と自身に何が必要かを考えて練習に取り組んでいる選手とでは努力の質も変わってきます。これだけ情報があふれている現代社会において、この「正しい努力」ができるかどうかは非常に大きな意味を持ちます。
「正しい努力」をするためには、まず自己分析が欠かせません。自分の良さ、足りないものを客観的に確認することができて、初めて努力をするためのスタートラインに立ったと言えます。もちろん、自己分析をする上で指導者やチームメイトからのアドバイスに耳を傾けて、受け入れる事も不可欠です。次に練習メニューを適切に選ぶことです。ここでも指導者に相談するなどした方が効果的だと思います。
プロサッカー選手を目指す若い皆さんには、ぜひ「正しい努力」を身に着けて、持っている才能を開花させてほしいです。
日本ではテクニックに優れた選手を“良い選手”ということが多いですが、様々なタイプの選手がチームには必要です。ということは様々なタイプの“良い選手”が必要になります。
チーム、ポジションに求められる良い選手になって夢を叶えてほしいと思います。