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【ワダサカ論】vol.50
Vol.50 佐藤寿人氏②
前回のコラムでも取り上げた佐藤寿人氏とは、私がベガルタ仙台で通訳兼トップチームのコーチをしていた時に一緒に仕事をしました。
当時、彼はまだ20歳くらいで完全なレギュラーと呼べる選手ではありませんでした。
2003年にベガルタ仙台はJ1で残留争いに巻き込まれ、最終的には残念ながらJ2へ降格してしまうのですが、そのシーズンの後半部分と翌年2004年のJ2でのシーズンを共に経験しました。2004年、J2で戦った時はクラブとしては非常に厳しい時期でしたが、彼はその中でレギュラーの座を掴み、20得点を挙げ(J2得点ランク4位)、チームに欠かせない選手となりました。
当時から練習に取り組む姿勢は素晴らしく決して手を抜くことはありませんでした。チーム状態が良くない時には、集中力を欠く選手や投げやりなプレーをする選手もいたりしますが、彼のそんな姿を見たことはありませんでした。
監督の話を集中して聞いていましたし、フィジカルコーチと走り方に関して議論したりするなど、新しいものを吸収しようとする姿勢も素晴らしかったです。ピッチ外でも遠征にマイ枕を持ち込むなど若い時からどうすれば良い選手になれるのか、良いプレーができるのかを常に考えて実行していました。
佐藤寿人氏の印象的なプレーの一つとしてよく挙げられる試合に、2004年8月8日に行われた川崎フロンターレとの試合があります。この試合は、なんとアディショナルタイムだけで2得点を決めた試合でした。当時の川崎はJ2で圧倒的な強さを誇り、J1昇格に向けて独走態勢に入っていました。メンバーにはMF中村憲剛、FW我那覇和樹、DF相馬直樹、FWジュニーニョ、FWマルクス、DFアウグストといったJ1レベルの選手たちがプレーしていました。当時の中村憲剛選手に関しては、チームが昇格を逃しても彼はJ1のチームへ個人昇格するだろうとも言われるようなレベルでしたし、ジュニーニョ選手とのホットラインはJ2のレベルをはるかに超えた攻撃力でした。
ベガルタのホームでの試合でしたが、2点をリードされたまま、アディショナルタイムに入りました。佐藤寿人氏が1点を返したのですが、私は恥ずかしながらこれで試合終了だろう、1点でも返せて良かったと考えていました。
ところがあっという間に2点目となる同点ゴールを決めました。当時はJ2とはいえ満員のスタジアムでしたから物凄い歓声が巻き起こったことを今でも覚えています。
1試合2得点するだけでも凄いことだと思いますが、たった1分間で2得点はおそらく二度と見ることはないでしょう。まだ見たことない方はぜひYouTubeで探してみてください。
当時の公式記録では、どちらの得点も「89分」と表記されています。現在だと「90分+〇」のように表記されるので、今であれば「90分+3」「90分+4」と表記されます。現在の表記の方が、より記録の凄さが伝わるので勿体ないと感じます。
すでに試合を諦めていた私は、彼のゴールを狙い続ける姿勢、文字通り最後まで試合は分からない、決して気を抜いたり諦めたりしてはいけないことを学びました。
今回の講演会ではそのあたりの話を聞くことはできなかったので、佐藤寿人氏にはまた来ていただき、学生に沢山アドバイスしてもらえたらと考えています。