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【ワダサカ論】vol.11

Vol.11 トレーニング論

 

もうすぐJリーグが再開します。Jリーグだけでなくアマチュアサッカーも公式戦が始まる予定です。嬉しいことですが、練習ができない期間もかなり長かったので、特に大都市圏のチームは大変だろうと思います。当たり前の事ですが試合をする前にしっかりとトレーニングをしなければならないからです。

Jリーグクラブのトップチームコーチや地域リーグの監督をやらせてもらった経験をふまえて、今回はプロ選手に向けた「トレーニング」について、私の考え方を書いていきます。

 

良いプレーをするため、そして怪我を防ぐためにトレーニングは欠かせません。トレーニングで重要なことは「肉体的、精神的な負荷をかけること」ですが、怪我のリスクを考慮して、負荷を掛け過ぎないようにすることも意識しなければなりません。トレーニング後には疲労感がなければなりませんが、翌日練習に行きたくないと感じるほど疲労が残るのは問題です。筋肉痛が残ることはあるでしょうが、それでもトレーニングが楽しみに感じられるような環境、負荷のコントロール、練習メニュー、チームの雰囲気というものを用意するのが指導者の役割だと思います。もちろん、やる気が無い選手に対してその環境を整えることは不可能ですし、全選手が居心地良いという環境は現実的ではありません。ただ、少しでも居心地の良い環境を作るために努力することが指導者にとって重要です。

具体的なトレーニング内容に関してですが、まずは自チームのプレーモデルに沿ったものでなくてはなりません。第一に自分達が目指すプレーがあり、それを実現するためのトレーニングという関係です。ですから、単に強豪チームがやっているという理由だけでメニューを真似しても仕方ないのです。そのメニューが、目指すプレーに有効だという判断があれば問題はありませんが、気を付けなければなりません。

ヨーロッパでは「良い監督」とは、勝つために何が重要かを理解していて、その要素を繰り返しトレーニングする監督を指します。

また、一回のトレーニングの中でも初めから終わりまで「つながりがある」ことが望ましいです。練習の設定や難易度、人数、オーガナイズなどは変えますが、テーマは一貫しているということです。そうなると練習中の視点、声掛けも変わってくるはずです。

そして、「可能な限りボールを使ってトレーニングをする」という事を頭に入れておかなければなりません。フィジカル能力の向上も、可能な限りボールを使って練習します。フィジカルトレーニングにおいても基本的には、戦術的要素も含めながら行います。こうすることで複合的に選手の能力を高めることができます。良いプレーをすることが最終目標ですから、ただ走るのではなく、「良いプレーをするために、いつどこに走るか」ということを考えさせながら行うのが重要です。

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私の師であるベルデニック氏の先生にあたるブランコ・エルスナー氏はこう言いました。

「トレーニングで何をしたらいいか迷ったらゲームをしなさい。ゲームをしていれば最低限の質は保証される。」

考えに考えてひねり出したメニューで大失敗した経験は私もあります。そんなときは、この言葉を思い出して考え直すことにしています。

 

今回はプロ選手に向けたトレーニングについて書きましたが、育成年代向けのトレーニングだと当然ながら違ったアプローチになります。

指導者の方や指導者を目指している皆さんにとって、「トレーニング」を改めて考えるきっかけになれば嬉しいです。